嬉しい♪

若造から頼まれていた書類を揃える事もできないくらいバタバタした一日。
皮膚科をキャンセルして、残業して資料を揃えた。
「終わった〜。帰ろうっと。お腹空いた・・・」とつぶやいていたら、ジッと見つめる若造。
「なに?」
「食べに行きましょうか?!」と、キラキラした目で見つめていた。
「ほんと?あ!あなた全然終わりそうも無いじゃない・・・」と悲しい顔をすると、
「(あれとこれと・・・と指差し確認しながら)大丈夫です。ただ、30分下さい。それで片付けますから!」と言う。
「わかった、私もまだやりかけの事あるからやっつけるわ!」と、二人で猛然と働き出す。
「何が食べたいか考えておいて下さいね。」と言われ、
「え〜・・・肉以外。昨日沢山食べたから。」と答えると
「肉以外か〜・・・分りました。」と俄然やる気を出していた。
今日は残業が多くて、おっさん達も沢山残っていた。
「おい、今日はO野んちに皆で行ってメシ食おうぜ!」なんて隣のGLが言い出す。
「え〜なんで俺んち?遠いよ。」なんて雑談も始まる。
そのうち皆で行こうって事になるのかな?と思いながら手を動かしていたら、隣でマグカップを洗いに行く若造。
お!終わるのか?!と思って、私も片付け始める。
エレベーターホールの方を無言で指差す若造を見てうなずき、
「お先に失礼しま〜す。」と言って帰る。
一階のエレベーターホールに待つこと5分、若造現れる。
「もう皆で食べに行くのかと思った。」と言うと
「Mさんはそんな感じだったけど、それはもう断ってきましたよ!」だって。
人形町の方でも良いですか?一時僕の中で人形町が流行って、結構知っているんですよ。」
「良いよ。へ〜、誰と行ってたの?」
「え?!・・・」
「・・・あぁ、そうか。会社の人じゃないのね。失礼しました。休みの日もこっちに?」
「いや、会社帰りが多かったかな。バルっぽいお店を結構探してて、六本木とかも行きましたよ。ちょっと違う感じで、二度と行けませんでしたけど。ハハハ・・・」
「あはは・・・そうなんだ〜?」
「じゃぁ今日はフレンチにしましょう!フレンチって言うか・・・フランス料理。」
「すごい!大丈夫なの?入れるかなこんな格好で??」
「大丈夫です。全然カジュアルな店なので。」
そこは先日姪と水天宮のホテルに泊まる時に、夕飯候補に挙がっていた店だった。
「ここ知ってる!この前迷って入らなかったの。」と言って、二人でカウンターに並んで座る。
私が昨日サムギョプサル食べ放題だった事を話すと、サラダやカルパッチョとピザをオーダーして、スパークリングワインで乾杯した。
表面張力ギリギリまで注がれたワインなんて初めて見たよ。
「今日は愚痴ばっかりになっちゃうかも・・・」
「良いよ〜、何でも吐き出して頂戴。」
私は急に誘われて浮かれていたが、それより朝からお腹の調子が悪くて、実は食事する気力は無かった事の方が気がかりだった。
「全然食べないじゃないですか!」
「食べてるよ!」
先日のタイ出張の大変だった事、残業が毎月30時間越えて問題になっていること、内勤できなくて大変だって事、会社の人の話等、沢山話した。
最初は不安だったお腹も、途中から気にならなくなっていた。
デザートも1個を二人で突きながら食べました。
デートか!って感じで楽しかったな〜。
「居眠りの事、正直どう思う?誰にも言わないから。」
「え〜?・・・それは〜・・・もっとちゃんとやって欲しいなって思いますよ。」
「でしょ?なんで誰も何も言わないの?もっとやるべきでしょう?言っとくけど、彼女と私は同等なんだからね。同じ事をやらせて当然なんだよ。全然やらないのに、どうして皆優しくするの?できなくても間違っても怒らないし。私だったら土下座ものって事も、知らん顔してるじゃない?間違いましたけど何か?みたいな。なんで許されるんだろう?」
「ほんとですよね〜。」
「今回のF社だって、前に副本部長に言ったよ。彼女を昇格させるなら、新規案件は全部私に回さないで、彼女にも平等にやらせてくれって。逆の立場だったら、私は絶対に面白くないと思うから。大きな会社相手の新規物件を担当させるべきだって。」
「がおさん、それは無理です。がおさんみたいにできる人は、この会社には居ませんから。」
「そんなヨイショしたってダメだよ!」
実は嬉しい。
帰る時、彼は新日本橋まで歩くというので
「じゃぁ私も三越前まで歩く。」と言って、一緒に20分くらい歩いた。
前回みんなで行ったミートセンターの時の記憶が本当に無いらしい。
「そんな事言いました?本当に覚えてないんですよ。なんでだろう?結構なピッチで飲んだとは思ったんだけど・・・」
きっと別れ際にハグした事も覚えてないんだね〜。
ドキドキして損しちゃったよ〜。
彼は入社以来A以下を取った事が無いんだって。
「去年Sでした」なんてサラッと言われたし。
「でも前のリーダーのおかげだと思います。とても押してくれたので。今年はもう無理だと思いますよ。それに、評価は別に気にしてないんですよね。」だって。
ずっとAだから言える事だよね。
「この前若造が出張してたときかな?ここに今年の新入社員二人連れて、野良元妻と4人でランチに来たんだ。食べた事ある?結構美味しいんだよ。」と、ステーキ屋を指差すと
「あ〜一度くらいあったかも。でも僕の方が凄いです!」
「何が?」
「僕は入ったばっかりの時に、がおさんに大江戸の鰻ご馳走してもらいましたから。あれは嬉しかったな〜♪」だって。
「まぁ!覚えてくれてたんだ。上とかじゃ無かったけどね〜」
「覚えてますよ。美味しかったし感動しましたから!」だって。
上手だね〜。
食べだしたのも8時半過ぎてたし、家に帰ったら12時過ぎちゃったよ。
でも楽しかった。嬉しかったなぁ・・・(涙)
私にとって彼は特別だけど、彼にとっても私は特別だって野良元妻に言われたけど、本当にそうなのかもと信じられるような夜でした。
ベクトルは違ったとしても、「他の人とは違う大切さ」を私に対して持っていてくれる気がした時間でした。
もう僻んだり拗ねたりするのはやめようと思いました。
ただひたすら彼の側でサポートして、サポートしてもらって、お互いに大切な気持ちは同じなんだって信じて行こうと思いました。
「特別なお土産買ってきてるの、がおさんだけですから!」
「私だって甘やかしてるの君だけだよ!」
そうなんだよ。信じようよ。
一緒の道は歩けなくても、同じ方向に向かっているんだって事。
そんな人を職場で見つけられた幸せを噛み締めながら頑張るよ。