敵は味方のふりをする

本部長から、ブタの件で相談があると言う。
今日、二人で話をする時間を求められた。
「がおさん、ブタに対して冷た過ぎない?」と言われた。
「は?どうして?」
「同じ仕事をする者として、先輩として、もっと助言しないの?」
「何もしていないって言うの?冗談じゃない。冷たいか冷たくないかと言われれば冷たいでしょう。でも、するべきアドバイスは常にしてきました。それを無視したのはブタですよ。私は経験から、ここはこうした方が良いとか、この資料を使って作業しろとか言いました。彼はそれを全く無視して、それで結果がこれですよ。」
「そうなんだ…」
「当たり前でしょ。最終的には私が関わる業務なんです。早く終わらせたいし、間違えたくも無い。でも、3月末の一件は酷かったから、私はあえて関わらなかったけど、さすがに4月はやらないと、経理からも怒られるだろうと思ったから、ちゃんと期限に間に合うように、前からやれやれって言ったし、なのに結局締めにも間に合わなくて、いつできるんだ?って聞けば、もうできる、今すぐできるって言いながら、五時間かかるんだよ?それってどうなの?私の事をバカにしてるとしか思えないでしょ?そんな人相手に、どうして温かく見守らないといけないの?」
「がおさんは誤解してるんだけど、あいつはごまかそうとしているわけじゃないんだよ。手を抜いているわけでも無くて、あれが一生懸命の結果なの。」
「え?あれが精いっぱいだから許せって事?」
「そうじゃないけど、もっとこう仲間意識って言うか…。違うな。確かにあいつ一人の為に、先月の残業時間の件もそうだけど、俺たちがお縄になるって話あったじゃない?総務がちゃんと計算しないで大騒ぎしたからいけないんだけど、あいつ一人の為に、ここまでしてきた仕事がパーになるっていうか、グループが無くなるって可能性もあるんだよ。それを防ぐためにどうすべきか、そういう風には考えられないかな?本当に、会社の存続すら危うくなるような状況だよ。」
「だから、採用した人の責任でしょう?」
「それは言っても仕方ないんだよ。ただ、若手はみんなずっと同じグループに居られるって事じゃないから、いつかは異動するんだけど、それまではどうにかしないとどうしようもないんだ。だから協力するって考えられないかな?」
「協力ねぇ…もちろん私だって、自分の所属を危うくしたいとは思っていないし、でも正直最低限の接触しかしたくないし。」
「そうか…わかった。」
考え方が全く違うから歩み寄りようが無い。
10日後には新しい営業がやってくる。
彼が来て、何かが良くなれば良いなと思う。
他力本願だけど、もう私にできることは無いよ。
夜、姪と舞浜のホテルに泊まり、明日のディズニーランドに備える。
何もかも忘れるために大声を出す!